ヨシを活用したブランド「リエデン」に、琵琶湖をもっと面白く、琵琶湖をもっと身近にをコンセプトにした「びわこ文具」シリーズがあります。その中でもひときわ、その特長が色濃く出ているのが「びわこテンプレート」です。びわこテンプレートは 約1/100万スケー ルの琵琶湖や、琵琶湖に浮かぶ沖島や竹生島もきちんとした位置で描くことができます。また、テンプレートには滋賀を巡るツールとしての活用法もあり、お天気マークや交通手段、滋賀の特産や名所をアイコンのように描くこともできます。そんな「びわこテンプレート」はどうのようにして生まれたのか、今日は開発のひきだしを開けてみたいと思います。
びわこって描けないよね。って話
特に県外の方に雑談で
「ところで御社は滋賀のどちらの方にございますか?」とか、「どちらにお住まいですか?」とよく聞かれます。
で、えっとね、弊社は愛荘町にございまして、と説明しても
「あぁ~彦根の近く?」
いえいえいえ、そんな城下町ではありません。
「あ、近江八幡あたり?」
あー都会過ぎ~
「長浜!」
いやいやいやそこ観光名所!
「雄琴っ!!」
ぜっんぜん違います。とうとう琵琶湖渡ってしまいましたね。
ここ愛荘町はまだ知られざる土地のようで、こうなれば百聞は一見にしかず。まずは琵琶湖を描き、その周辺に主な各市街地や駅を描いて、それから弊社の位置はここで、と示せば何となくはご納得いただけます。
そう、これも「滋賀県あるある」のひとつ。自分の住まいや勤め先などの場所を県外の方に示すのに、琵琶湖を中心に説明することがあります。その時に思うのです。
「びわこって描けねーな」と。
そこで、開発グループでびわこ文具シリーズの次なるアイテムは何にするかという企画会議の中で、びわこがすらすら描けるテンプレートなんてどやろ?となったのです。その時、たまたま通りかかった他部署の社員にこのテンプレートのプレゼンをしたら「いいやん!」という好反応。なんと、アンケートn数=1でこの企画をすすめたのです。どうでしょう、この勢い。むしろ勢いだけで進んでいます。
ツッコミどころ満載のボツ案
では、どんなデザインのテンプレートにするのか。ここで、びわこテンプレートが完成するまで泣く泣くボツになったデザインからの最終までの変貌をご覧ください。
テンプレートの案出しの初期、まず琵琶湖はある程度ちゃんとした縮尺で表現することを条件に、滋賀を旅する際に使って楽しいをコンセプトに考えました。初稿にはリエデンの資料に度々登場する水辺の生き物を中心に、とりあえず形に。
でもこれでは滋賀の魅力が薄いので、第2稿では滋賀県の特産物を中心に考えました。まが玉でも、太いまゆげでもない、これは「ふなずし」。オカリナでも、スライムでもない、これは「 セタシジミ 」。ダンベルでも、メガネでもない、これは「サイクリング」。いかがでしょうか、このなんとも言えないフォルムの数々。特にサイクリングについては、絵柄の一部をテンプレートで描いて、残りの線をご自身で付け足してもらうという鬼仕様です。
[第3稿]
そこから、このテンプレートを旅行やサイクリング(ビワイチ)の計画や、思い出を書き留めるのに使ってほしいね!と思い直し、やはり第3稿ではレジャーに使えるお天気マークや交通手段は必要となりました。(ここで、第2稿のふなずしたちはボツに。 惜しすぎる・・・)サイクリングもここでは「ちゃり」と呼び方が変わっています。そして、テンプレートのサイズは野帳に合わせて、インデックスとして活用できるような形にしました。テンプレートと野帳のセットがあれば滋賀の旅ももっと楽しくなります!
ただ、ここからが(やっと)開発らしい話となりますが、テンプレート本体の強度を保つため、そして何より適正な価格を実現するためのコストの問題があり、たくさんアイコンを詰め込むことが叶わず、ブラッシュアップした結果、第4稿でだいぶんスッキリしたデザインになりました。滋賀の文字も特に特徴的なイナズマ部分だけ抜きに。これは「滋」の見た目がゲジゲジしていることから、県外から(特に周りの大都会さんから)車のナンバープレートを指して「ゲジナン」と揶揄されることがあり、こちらも「ゲジゲジちゃうし。イナズマやし!」と言い返すまでがワンセット。でもそれって逆に面白い。むしろゲジナンって滋賀だけ。マイナス要素すら愛おしいマジックです。
はたと気付くのです。竹生島があるのに、なぜ沖島がないのか・・・むしろ沖島には人もお住まいで、なんなら琵琶湖に浮かぶ島で一番大きいのに、ないのはおかしい・・・最終稿では無事、沖島も竹生島も入りました。テンプレートでなぞって琵琶湖を描いて、その描かれた琵琶湖にテンプレートに印刷された琵琶湖の線を合わせて島をなぞると、正確な位置で島も描けるというこだわりです。そして、「サイクリング」から「ちゃり」、最終は「じてんしゃ」で決着が着きました。
想像と現実の埋め合わせ
さぁ次は、実際に本体素材のアクリルでデザインを抜き加工を施して、琵琶湖やそれらのアイコンがちゃんと描き表すことができるのか、チェックです。
[左]校正1回目、[右]校正2回目、[下]切り落とされた琵琶湖の中
琵琶湖の形をつくる細かな角のアールであったり、スムーズに筆が運べるかなど、想像と現実を自分たちの手で確かめて、その隙間をちょうどよい塩梅で答えを導き出す。そのため、琵琶湖は何度も確かめました。また、細かいこだわりで言えば、例えば、小さいアイコンですが、家の形は校正1回目では屋根の三角部分があまり出なかったので、校正2回目では三角と下の四角部分に差をつけました。しかし、あくまで家に見せるために全体を調整してます。ほんとに細かいところです。
[実際、指示を出した資料]
素晴らしいアドバイスを含めてご協力してくださる技術工場さんのおかげで、形になりました。ほら、こんなにきれいに琵琶湖が描けます。ちなみにあの星のマークは・・・じ、実は弊社の位置にございます。ということで、コクヨ工業滋賀がある愛荘町ってこの星のところです。一度お越しくださいませ!
ヨシの使いドコロ
そう、これはあくまで「ヨシで琵琶湖を守る」リエデンのアイテムなので、どこかに「ヨシ」を活用したいのですが、さてどちらに。やはりテンプレートの本体は、本来の性能を優先すると断然透明のアクリルがふさわしいので、パッケージにヨシ紙を採用することになりました。さらには、そのパッケージはちょっとの工夫でテンプレートを入れるカバーになり、包装の副資材も捨てずに長く使ってもらえれば、ヨシを広めるためにも最適と常々考えています。
まさに、ヨシ(紙のカバー)で琵琶湖(テンプレート)を守る仕様です。
ご購入していただいたお客様から「買ってみたんだけど、コレいつ使うの?」と忘れられないお電話をいただいたこともあります。他には、
「余呉湖入ってないよね?」
「鳩(平和堂)はなくちゃ!」
「ダッシュはとび太くん?」などお声も・・・
モノづくり側としては、こうしてお客様との交流がテンプレートを介して行えることが何よりも楽しく、そのコミュニケーションの中に次なるヒントがあったりします。
私たちのひきだしの中は、もちろん「世に生み出したい」という私たち自身の思いもありますが、協力してくださる技術者さんの「やってやろうじゃねーか」という頼もしい心意気、そして様々に反応をくださるお客様の声であふれているのです。
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